2026/06/29 17:00
CHEMISTRY、ソロアーティストとしての活動に加え、舞台やミュージカルなどにも表現の場を広げてきた堂珍嘉邦が6月15日、【Billboard Live Tour 2026】のファイナル公演を行った。2001年にCHEMISTRYとしてデビューを果たし、今年で25周年を迎えた堂珍。そんな節目の年に行われた恒例のビルボードライブ・ツアーは、初の東京を含む全3会場で実施された。ここではその東京公演2ndステージの模様をレポートする。
定刻となり、ノスタルジックなジャズのBGMとともにサポートメンバーの柴田敏孝(Key / Band Master)、小池龍平(Gt / Backing Vocal)、砂山淳一(Ba / Backing Vocal)、清野雄翔(Key / Backing Vocal)、工藤誠也(Dr / Backing Vocal)がステージに登場。少し遅れて堂珍が姿を見せると、会場には温かな歓声が広がった。
ライブは、ミュージカル【モーツァルト!】より「僕こそ音楽」で幕を開けた。流麗なピアノのイントロに導かれ、伸びやかな歌声が客席の一人ひとりに届く。若きモーツァルトが自らを「音楽」そのものとして歌うこのナンバーは、堂珍自身のシンガーとしての意思表明にも聞こえる。
続く「BETWEEN SLEEP AND AWAKE」では、小気味よいギターのカッティングに躍動感のあるパーカッション・サウンドが絡み、オーディエンスも自然と体を揺らす。堂珍はファルセットと地声を織り交ぜながら、抑制の効いたメロディをしなやかに歌っていく。少しずつ、じんわりと熱を帯びていくアンサンブルが心地よい。
「one & only」は、Spinna B-ill & The cavemansのナンバー。ジャズファンクのグルーヴがステージから放たれると、客席からは自然発生的にハンドクラップが起こる。堂珍は手振りや身振りを加えながら、全身で楽曲の世界を立ち上げていく。声だけでなく、身体の動きや視線、間の取り方まで含めて観客を惹きつけるその姿には、ミュージカルの舞台で培ってきた表現者としての説得力が滲んでいた。
ここで、三浦大知の「IT’S THE RIGHT TIME」をカバー。ゴスペルの香りを漂わせるピアノと歌から始まり、やがて力強いアンサンブルが堂珍のソウルフルかつエモーショナルな歌声と重なっていく。そこからCHEMISTRYの「いとしい人」へ。清野が鍵盤ハーモニカで印象的なフレーズをノスタルジックになぞり、オーセンティックなソウルミュージックの温もりをたたえたアンサンブルの中で、堂珍は一言ずつ噛みしめるように歌を届けた。
ライブ中盤は、すでに恒例になっているという「勝手にミュージカル」のコーナー。見たことのないミュージカル、内容も詳しくは知らない作品のナンバーに挑戦するのがテーマで、この日選ばれたのはミュージカル【エリザベート】より「最後のダンス」だった。ジャジーなムードから一転、歪んだギターが唸りを上げるハードロックへとなだれ込み、楽曲はドラマティックなロックオペラの様相を帯びていく。その力強いサウンドに負けじと、堂珍もパワフルな歌声で応える。後半、転調とともにバンドはさらに一段ギアを上げ、目まぐるしく展開するサウンドに飲み込まれるように客席の熱も高まっていった。
この編成の真骨頂を感じさせたのが、Akeboshiの「曇り夜空」だ。切ないピアノの独奏から、少しずつリズムが輪郭を持ちはじめ、そこに堂珍の歌が静かに重なる。浮遊感をたたえたメロディの中で、バンドは緩急自在に静と動を行き来し、淡く始まった曲をダイナミックなうねりへと押し広げていく。堂珍はその流れに身を委ねながら、言葉にならない感情の揺らぎをすくい上げる。演奏後、堂珍はこの日のバンドメンバーを紹介。大阪、横浜を経て迎えたファイナルのステージに、「すごく楽しく、幸せな気持ちで演奏させていただいています」と感謝を伝えた。
続くSPANOVAの「魂は木の葉のように」では、軽やかなスキャットをオーディエンスと一緒に歌い、会場に温かな一体感が生まれた。かと思えば「CARAVAN」では、砂山のベースリフに導かれ、堂珍の官能的なボーカルが会場をエキゾチックでスリリングなムードへと引き込んでいく。途中で各楽器によるソロバトルも繰り広げられ、演奏はさらにエネルギッシュに加速。そして堂珍自身が作詞を手がけたソロ曲「Fly away」で本編を締めくくった。
アンコールでは、自身が出演したミュージカル【RENT】について語ったうえで、「One Song Glory」を披露。30代に入った頃、ブロードウェイ作品ならではの選考を経て役を得たこと、作品に深く心を打たれた“レントヘッズ”と呼ばれる熱心なファンの存在、そして自身にとっても大きなやりがいのある舞台だったことを振り返る。堂珍は、限りある人生の中でなお歌を残そうとする祈りのようなこの曲を、英詩のオリジナルバージョンのまま、朗々とした歌声で届けた。
その余韻をやわらかく解きほぐすように、会場へ明るい光を差し込ませたのはソロ曲「RAINBOW」。様々な時代、ジャンル、ステージを行き来してきたこの日のライブは、最後に希望の色を帯びた風景を残し、大きな拍手に包まれながら幕を閉じた。ビルボードライブならではの近い距離感の中で、歌うこと、演じること、バンドと音を鳴らすこと。そのすべてを楽しみながら、堂珍嘉邦は“表現者”としての現在地を鮮やかに描き出していた。
Text by 黒田隆憲
Photo by 柴田恵理
◎セットリスト
【堂珍嘉邦 Billboard Live tour 2026】
2026年6月15日(月)東京・ビルボードライブ東京
2ndステージ
1. 僕こそ音楽(ミュージカル【モーツァルト】より)
2. BETWEEN SLEEP AND AWAKE
3. one & only(Spinna B-ill & The cavemans Cover)
4. IT’S THE RIGHT TIME(三浦大知 Cover)
5. いとしい人(CHEMISTRY)
6. 最後のダンス(ミュージカル【エリザベート】より)
7. 曇り夜空(Akeboshi Cover)
8. 魂は木の葉のように(Spanova Cover)
9. CARAVAN(Duke Ellington Cover)
10. Fly away
En1. One Song Glory(ミュージカル【RENT】より)
En2. RAINBOW
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